XILLIA

嫌われたがり

「本気で俺を嫌ってるんだろうな」

 頼りない顔で、そんなこと。何を言ってるんでしょうか、この人は。
 また裏切るから嫌だというティポに、ジュードは何も答えてくれませんでした。いつかのように「そんなはずないよ」とは言わなかったんです。
 それでも一緒に行こうと言ってくれる人が、嫌っているだなんて。
「そうですよ。わたしもキライです!」
 だけど気がつけば、わたしはアルヴィンの台詞を肯定していました。
 ごめんなさい、ジュード。
 いっそそうだったらよかったのにって思ったんです。
 ジュードはもっと、怒ってもなじってもいいはずです。それだけのことをアルヴィンはしたんですから。
 ジルニトラが沈んだ後、姿を消して、心配したんですよ。それなのに、ミュゼと取引していたなんて。レイアを傷つけて、ジュードを殺そうとしたなんて。
 どう考えてもアルヴィンが悪いです。
 だから、悪いことをしたなら謝れば許してくれますよって、もしかしたら言ってあげられたかもしれないのに。
 ジュードが怒っても嫌ってもいないから、どうすればいいのかわたしにはわかりません。だって、平気なようにも見えないんです。ひどいことされたんだから当たり前です。でも、嫌いになったわけじゃなくて。
 ジュードはアルヴィンのこと、どう思ってるんでしょうか。
 嘘つきなのも裏切るのも知っていて、それでも一緒に行こうって言ったのはどうしてですか?
 わたしには難しくて、今はわかりません。
 でもきっと、ちゃんと理由があるはずなのに、そんな途方にくれた顔で嫌われてるって決め付けるアルヴィンなんか、やっぱり嫌いです。
 ジュードがなんて言おうと、わたしは怒ってるんです。勝手にいなくなったことも、レイアを撃ったことも、ジュードを殺そうとしたことも。
「エリーゼは……」
「なんですか?」
 だけど、反省して、もう絶対に悪いことしませんって謝れば、少しは考えてあげてもいいんですよ?
 なのに。
「お前はそうやって文句言ってくれ。そういう本音、案外嬉しいんだ」
 なんですか、それ。
 嫌われたままでいいってことですか。じゃあなんで一緒に来るんですか。
「ヘンタイさんも嫌いです! 行こ、ティポ!」
 意味がわかりません。
 なんだかすごくモヤモヤします。ジュード、ジュード聞いてください。
 駆け出した先、ジュードが振り向いてくれたから、わたしはちゃんと自分の口で言いました。
「アルヴィンは、バホー、です!」
 わたしの大好きな蜂蜜色の瞳が一度大きく瞬いて、それから内緒話みたいな声で。
「本当にね」
 そっと目尻を下げるから。
 どうしよう、泣きたくなります。
 アルヴィンは本当にどうしようもなくバホーです。
 こんな顔をする人が、嫌っているはずないのに。何にも見てません。早く、気づけばいいんです。バホ。
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